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ベンチに座る

どこか知らない土地の原っぱなんか見えるベンチに腰をおろし、静かに笑っている僕の目には何が映っている?

どこから来たのか、目の前を車が通りすぎ、子どもたちの陽気な声が聞こえてくる。

雲の動きに業を煮やした鳥たちは一斉に空を旋回し、草木はそれを笑うように涼しげな音をたてる。

自分がここにいることが、どうしても理解できなくて、五感を刺激する一切を拒絶してみたくなったり…。

自分がここにいることを認めてもらいたくて、煙草を吹かし、緩んだネクタイを整えたり…。

何をしても夢見心地で。

何をしても苦しいだけ。

不確かな時間の経過だけに己の一切を囚われ、身動きができずに、ベンチにもたれている僕を笑ってください。

頭ばかりが、考えばかりが動き回って、肝心の手足は、事切れた蛇のように、だらりとベンチからはみ出して。

乾いた頬に涙なんかが垂れて、このまま消えたらどんなに楽だろうなんて。

鞄は既にベンチと同化し、僕の腰も次第にベンチになりつつある。

一度でいいから、こんなのんびりとしたところで思い切り叫んでみたい。

僕の苦しみを伝えたい。

この、平穏な景色に。

でも、僕には叫ぶ元気も勇気もなく、ただ、だらりとベンチに同化するのを待つばかり。

僕が見ているものは、いったいなんなのだ?