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目玉焼きにストローク

二十日鼠の身体をまさぐり終えると、私は24時発の電車に乗った。新橋から知らない土地へ。カモシカを撃った戦闘機のように、夜空の星を見上げると、星は笑い、私もつられて笑った。言わんこっちゃない。そんな目をするからネクタイが曲がり始めるんだ。流血する腹を押さえながらカモシカは言う。私はお前に言われたくないと言う。これだから人間というやつは。カモシカは優先席に寝転がると、つり革を睨み付けながら、軽やかな調子でインターナショナルを唄いだした。

起て飢えたる者よ 今ぞ日は近し
醒めよ我が同胞 暁は来ぬ
暴虐の鎖 断つ日 旗は血に燃えて
海を隔てつ我等 腕結びゆく
いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あぁ インターナショナル 我等がもの
いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あぁ インターナショナル 我等がもの

 

新橋を離れて、半月が経った。

私は既に死に絶えたカモシカを担ぎ、電車を降りた。私の眼前には素晴らしい景色が広がっていた。二十日鼠の身体をまさぐっていたことが懐かしく感じるほどに美しい景色だった。空には奇形の雲が居心地の悪そうな様子で佇んでいた。なあ、君の身体はおもしろい。私にもっとよく見せてくれないかい。私は雲の鼻を掴むと、力任せに引っ張った。すると、雲の鼻はたちまち足となり、この世に存在する全ての喜びの魂となった。くそったれ!気に食わねえ。その足をしまえ!おめえの足はそこにあるはずがねえんだよ!雲は軽くダンスをして緩やかに去っていった。私は、ふいに本棚のことを思い出した。ああ、そうだった。本棚には本なんてはいっていなかった。私の本棚には本なんてはいっていない!それなのに、雲は足を生やしてダンスを踊りやがる。興奮した私はケツから卵を生み、空へ投げつけた。太陽にぶつかって割れた卵は、たちまち目玉焼きとなり、この世のものとは思えない声をあげて、死んでいった。